美容整形手術を行う診療科は一般に、美容外科と呼ばれます。美容外科という独立した呼称自体は歴史が浅く、診療科としての成立は近年になってからのものですが、それまでも形成外科の一分野として、美容整形に類する手術は行われていました。形成外科とは、総合病院などの大きな病院には大抵の場合設けられている診療科で、外傷による体の変形や、先天性の奇形などを外科的処置によって修復します。その延長として、シワの除去や皮膚のアザなどの修正手術も、形成外科の領分に含められていました。
世界最初の美容整形
美容整形手術のルーツを求めて文献にあたると、なんと紀元前500年頃にまでさかのぼれます。古代インドの医学者ススルタは、その著作「ススルタ大医典」のなかで120以上の外科用器具や300もの外科手術法、8種類の手術区分について系統的・分類的に記録していますが、それらの技術と知識を用いて、鼻そぎの刑に処された罪人に対し、造鼻術や造唇術などの整形外科的手術を施していたとされています。現代のわたしたちが考える意味での美容整形ではありませんが、肉体の外見を外科的処置によって矯正するという発想は、すでにこの頃から実践に移されていたのです。
学問と美意識の発達
ススルタらの知識は、アレクサンダー大王の東征などの東西交流を経て、やがてギリシャ・ローマ文化圏にまで伝わりました。ギリシャ・ローマ時代は医学を含めた様々な学問が発展し、またオリンピックなどの文化に象徴されるように、人間の健康と美に対する意識が著しく発達した時期でもあります。そのような文化意識を受けて手術は、美容と健康を崇める当時の人々に、半ば芸術のようなものとして尊重されていました。しかし、暗黒時代と呼ばれる中世に入ると、キリスト教の厳格な規律によって手術に類する物事は固く禁じられ、技術と思想の両面で停滞を余儀なくされることとなります。






